(睡眠時間を削って執筆された)この記事はKCCT-Densan Advent Calendar 2017の22日目の記事です。


1. なぜ日本・中国・朝鮮・越南で比較するのか

†: 「ベトナム」の漢字表記(「英米仏独伊露」のような音写ではない。ベト=越, ナム=南。日本語読みすれば「えつなん」)

 これら諸国は、漢字・儒家思想・律令制・大乗仏教・冊封などの文化的な共通点をもつ地域であり(漢字文化圏などと称されます)、 イギリス・フランス・ドイツ等におけるヨーロッパという概念に相当します。

画像は英語版ウィキペディアのページより拝借
 今回、各地でのコンピュータ用語(英語)の受容の状況について興味を持ち、調査しようと思い立った次第です。

2. 本題

 調査結果は、日本語については実際に専門書を参照し調べました。 が、他の言語についてはネットが情報源ですので、調査結果を鵜呑みにしないでください。
 越南語に関しては、漢字と𡨸喃を交ぜ書きで書いてあります。「?」はどの字か判らなかった時に置いてます。
 では、調査結果を投下していきます。

computer

computer(コンピュータ), 電子計算機, 計算機
電子計算機(电子计算机), 計算機(计算机), 電腦(电脑)
computer(컴퓨터), 數機(셈틀)
𣛠微倂(máy vi tính), 𣛠倂(máy tính)
註釈: 𣛠=機, 倂=計算に関する, 微=洗練された、という意味らしいです。

program

program(プログラム), 算譜
中(大陸) 計算機程序(计算机程序)
中(臺灣) 電腦程式
program(프로그램)
??程(một chương trình)

algorithm

algorithm(アルゴリズム), 算法
算法, 演算法, 算則法
algorithm(알고리즘)
術算(thuật toán)

data

data(データ), 算料
數據(数据)
朝(南) 資料(자료), data(데이터)
朝(北) data(데타)
與料(dữ liệu)

information

情報(敵情報知の略)
中(大陸) 信息
中(臺灣) 資訊
情報(정보)
通信(thông tin)

bit

bit(ビット)
中(大陸) bit(比特), 二進制位(二进制位)
中(臺灣) 位元, 二進制位, 位
bit(비트)

keyboard

keyboard(キーボード), 鍵盤
鍵盤(键盘)
朝(南) keyboard(키보드), 字板(자판)
朝(北) 鍵盤(건반)
盤?(bàn phím)

mouse

mouse(マウス)
中(大陸) 鼠標(鼠标)
中(臺灣) 滑鼠
mouse(마우스)
mouse(마우스)
𤝞(chuột )
註釈: 𤝞=鼠

display

display(ディスプレイ)
熒光幕(荧光幕)
display(디스플레이)

Operating System

日: Operating System(オペレーティング・システム), 操作系
中(大陸〉 操作系統(操作系统)
中(臺灣〉 作業系統
朝(南) 運營體制(운영 체제), Operating System(오퍼레이팅 시스템)
朝(北) 操作體系(조작 체계), Operating System(오퍼레이팅 시스템)

network

network(ネットワーク), 通信網
網路(网络)
network(네트워크), 網(망)

Internet

Internet(インターネット)
中(大陸〉 互聯網(互联网), 國際網(国际网)
中(臺灣) 網際網路, 國際網

server

server(サーバ)
中(大陸〉 服務器(服务器)
中(臺灣) 伺服器
server(서버)

client

client(クライアント)
中(大陸) 客户端
中(臺灣) 用戶端
朝(南) client (클라이언트)
朝(北) 依頼機(의뢰기)

install

install(インストール)
安裝(安装)
inatall(인스톨), 設置(설치)

download

download(ダウンロード), 落とし
下載(下载)
download(다운로드)

upload

upload(アップロード), 上げ
上傳(上传)
upload(업로드)
載𨑗<載𨕭か?>(tải lên)

smartphone

smartphone(スマートフォン)
中(大陸〉 智能手機, 智能機, 手機
中(香港, 澳門〉 智能電話, 智能手機, 手機
中(臺灣) 智慧型手機, 手機
smartphone(스마트폰)


3. 感想

 ...の前に陳謝。時間が足りず、調査対象の語彙を集められませんでした...。また、越南語の調査が疎かになってしまいました...。申し訳有りません。
それと全体に亘り括弧が多くなり見にくくなってしまいました...スミマセン...。
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 さて、コンピュータ用語についてですが、やはり、基本概念であっても音写が多いようです。
せっかく各言語に漢語という便利な体系が組み込まれているにも拘らず活かさないのは、 どことなく宝の持ち腐れな気がします。
(所謂カタカナ語を否定しているわけではありません。為念)

 電腦(電脳)や手機などは、日本語での俗語としての使用に堪え得るのではないか、と感じました。
(誰も「パソコン」だとか「スマホ」だとか、意味を噛み締めた上で用いて(発言して)いないでしょうし)

 また、安裝(安装)について、日本語の専門用語に組み込んでしまって良いのではないか、と思います。
(インストール作業のないソフトは、手動で配備することになるのでシステムに損害を与えるかもしれない、という感覚が伝わってくるでしょう?...こないですか?)

 漢字文化圏には、江戸・明治期の偉人たちの活躍により、 「力學(力学)・機械・存在・象徵(象徴)・哲學(哲学)・社會(社会)・經濟(経済)・細胞」などを始めとする、 大量の近代的語彙が共通の語彙として存在しています。
コンピュータ用語についても、共通の術語が作られれば、(文字での)意思疎通が簡単になるのではないかな、と思いました。
造語能力に長けた人の登場に期待したいです(まあ、漢語体系と計算機分野の両方に精通した学者が何処にもいないからこそ現にこうなっているのでしょうけども)。

 後、越南語は語順が変わるというのも面白いですね。

調査に用いたもの(の内、以下に書かれたもの)